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社長コラム

「タイムトンネル」

2021年4月 1日掲載

時は令和3年2月下旬。 
その日はやけに暖かい、いや初夏を思わせるほどの暑さであった。
運転中に「灼け付くような喉の渇き」に襲われた私の目は
車道の横を流れていく「そのシルエット」を微かに捉えたのだった。

ハザードランプを焚いて後方確認、いつも着ている赤いユニクロのベストの
ポケットの中をまさぐりながら歩みを急ぐと、「それ」も私の方へ「待ってました」と
言わんばかりに近づいてくるように感じた。私の目の前がぐるぐると回り始めるのが
わかった...。

それは運命の再会であった。 初めての出会いは保育園に通っていたころ、家のすぐ近くにあったサンドイッチ屋さんの前に「それ」は居たのだ。
赤8割白2割に塗られた筆記体のロゴがデザインされた、大きな体には栓抜きがあり、
「骨が溶ける」と言われた褐色の炭酸飲料を瓶に詰めた物が入っていた。
そして、私が成長すると同じように「それ」も形を変えていった。
1年後
250MLの缶ジュースが入るようになった。90円を入れてボタンを押すと下から
「HI-Cオレンジ」と書かれた酸っぱいジュースが出てきた。
ボタンにはお店のおじさんの直筆で「ハイシーオレンヂヂュース」と書いてあった。
3年後
とある合衆国の州名を冠するコーヒー飲料が登場。工事現場の職人さん達が
通うようになる。 真似をしておつりのレバーをガチャガチャと回したら、つり銭口から小銭がざらざらと出てきてサンドイッチ屋のおじさんに泣きながら壊したことを謝罪する。
目の前は再びぐるぐると回り始めて、気が遠くなっていった...。

ふと気づくと、私はコカ・コーラの自販機の前に立っていた。
特に何も変わらない、いつも見ている自動販売機。
小さな頃に見た思い出と、今の現実。自分の中ではそれが今も一つの線でつながっている。
実に面白いものだ。
ベストのポケットからは100円玉一つ出てきた。これでは何も買えないではないか。
「HI-Cオレンジだったら買えたのに...」
タイムトンネルから出てきた瞬間であった。

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